子どもの頃から本が好きだった母。
数年前から母は小さい字が見えづらくなり、文字を読まなくなりましたが、
ホームの母の部屋には、文庫本が何冊か置いてあります。
私が持ってきているのは、浅田次郎さんとか伊集院静さんとか、小川洋子さんとか、
割と最近の小説家の本なんですが。
母が昔読んでいたのは、いわゆる純文学系。なので、
実家の本棚を探して、太宰治の本があったので、それを1冊持ってきていました。
ここ2〜3日は、母が起きていてヒマしてる時間に10ページくらいずつ、
その太宰治の「斜陽」を読んでいます。
太宰治は母の好きな作家のひとりだそうで、斜陽は若い頃に一度読んだ事があると。
私は読んだ事がなく、初めてでとても新鮮です。
斜陽というくらいだから、上流階級の家族が時代の波を受け、零落していく様子を
描いている作品なんですが、この作品で母の好きなところの一つはおそらく、
その上流階級の娘さんの上品な言葉で語られる、昔の豊かな世界を
かいま見ることだったのではないかと思ったり。
あの、女芸人のゆりやんが物まねしている、昭和の女優のいた頃のような、
古き良き、ちょっと憧れる世界・・。それとはまたちょっとが違うか。。
斜陽は1947年に出ているようですが、ちょうどみんなが貧しかった時代です。
そういう中で、斜陽を読んで、廃れてきてはいるけど、上流階級の華やかだった
世界を想像するのは、戦争で傷ついた戦後に多感な10代を過ごした母には、
ものすごくパワーを与えたのではないかと思います。
ないものに憧れる気持ち、それはきっと、ハングリーな戦後世代を支え、
とてつもない力を発揮させ、経済を発展させてきた・・・。
なんていう、遠い昔や歴史のこともちょっと考えたり。
まぁとにかく、私達が絶対使わない言葉で綴られた昔の女学生風の文章を
母に読むのは、けっこう楽しい時間です。